はじめての事業計画の立て方|初心者が全体像をつかむ考え方【女性中小企業診断士が解説】(前編)

― 全体像を“つかむ力”を身につける
「事業計画って何を書けばいいの?」
「いくつもフォーマットがあって、どれが正解かわからない…」
創業相談の現場で、これは本当によく聞く声です。
そんなかたには、まず最初にお伝えしたいことがあります。
事業計画に正解はありません
事業計画は、
- 融資用
- 補助金用
- 投資家向け
- 内部設計用
など、目的ごとに形が変わります。
だからこそ、
いちばん最初に書く事業計画は、
あなた自身が、自分の事業を説明できる状態になるために作ることが大切と考えています。
東京創業ステーションの事業計画書
(参考)
【東京創業ステーション】の事業計画書のフォーマットはこちら⇒
事業計画書のサンプルも充実していているので、イメージが付くと思います。
これだけしっかりとした事業計画が作れれば、これから進むべき方向がとてもクリアになります。
事業計画は「先人の知恵」のかたまり
事業計画に出てくる問い──
- 誰の課題を解決するのか
- どんな価値を届けるのか
- なぜ自分がやるのか
- 続けられそうか(成立性はあるか)
これらはすべて、
考えずに始めて、あとから壁にぶつかった人たちが、結局向き合うことになった問いです。
つまり事業計画とは、
単なる書類ではなく、
同じ遠回りをしなくてすむように、先人たちが残してくれた「思考の知恵のかたまり」だと私は思っています。
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ハルコアラ先生。今日もよろしくお願いします!
私この仕事をするまでは、事業計画って、誰かから評価されるためのものだと思っていました。

はるこさん、今日もよろしくね。
そういう側面も確かにあります。
でも本当は、事業計画書って自分の頭の中を整理するための道具なんですよ。
Step1|最初に問われるのは、あなた自身
創業計画の場合は特に、
実績も、担保も、売上の証明もありません。
あるのは、
あなた自身のポテンシャルだけです。
だから最初に考えるのは、事業内容よりもここです。
- あなたは何者なのか
- これまでどんな経験をしてきたか
- なぜ、今この事業をやろうと思ったのか
- なぜ他でもなく、あなたなのか
これらを整理し、
言葉にできる状態をつくります。
整理の4つの問い(人の土台)
- あなたは、何者か
- 何をしてきたのか(成功・失敗・経験)
- なぜ、これをやろうと思ったのか
- なぜ今、あなたがやるのか
ここは自己PRではありません。
「この人はどんな人か」を理解してもらうための整理作業です。
Step2|「何をやろうとしているのか」を一言で言う
人の整理ができたら、次は事業です。
まずは、
事業概要を1文で表現します。
私は、
【誰】の
【どんな困りごと】を
【どんな価値】で解決する事業を行います。
この一文が、
この先すべての判断の背骨になります。
Step3|市場はあるのか?(想いを現実につなぐ)
ここからは、
「やりたい」だけで終わらせないためのパートです。
見るポイントは、難しくありません。
- 同じ悩みを持つ人は他にもいそうか
- そのテーマは、一時的なブームではなさそうか
- ある程度の人数が想像できるか
- すでに似たサービスは存在するか
競合がいる=市場がある
という見方でOKです。
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競合がいると、不安になる人も多いですよね。

でも競合が多いということは、それだけ市場がある証拠でもあります。
次はそんな市場の「誰に、どう届けるか」の設計に入っていきます。
Step4|なぜ、あなたが選ばれるのか(差別化)
ここまで来ると、多くの人がこう感じ始めます。
「競合はいるけれど、
私だから伝えられる価値がある気がする」
選ばれる理由は、
派手な実績や資格だけではありません。
- 当事者としての経験
- 丁寧な言葉
- 伴走する姿勢
- 大切にしている価値観や世界観
「この人からお願いしたい」と思ってもらえる理由
を、言葉にしていきます。
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ご相談に乗っていると、多くのかたはここですごく苦戦されます。

「なぜあなたが選ばれるのか」お客さん側の目線で考えてみましょう。
自分だけで言語化が難しければ、誰かと壁打ちをするのも効果的です。
AIも上手につかいましょう。
Step5|ビジネスモデルを描く
― 価値を、どうやって届けるか?
ここで改めて、
仕組みとしての事業を考えます。
- どうやって知ってもらうか(SNS・紹介・SEOなど)
- どういう流れで申し込まれるか
- どんな形でサービスを提供するか
これは、
価値を「届く形」にするための設計です。
Step5|ビジネスモデルを描く
― 価値を、どうやって「事業」として回すか
ここで初めて、
事業を「仕組み」として考えます。
ビジネスモデルというと難しく聞こえますが、
ここで考えるのは、シンプルにこのことです。
この価値は、
どんな流れでお金に変わるのか?

― WHO・WHEN・WHY・WHAT・HOWで整理する
ビジネスモデルとは、
難しい横文字の話ではありません。
価値が、
どんな順番で、
どんな理由で、
お金に変わるのかを整理することです。
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何度聞かれても、
ビジネスモデルってうまく説明できないんです…

「大丈夫ですよ。
実は、ビジネスモデルとは――これだけです。
価値を渡して、
お金をもらい、
それを繰り返せる仕組み。
これ以上でも、これ以下でもありません。
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え?
ビジネスモデルキャンバスとか……
9つも項目がありますよね?
なんだか、もっと複雑なような気がして……

そう感じますよね。
でも、それは“複雑にしている”のではなく、“分解している”だけなんです。
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分解……?

はい。
ビジネスモデルキャンバスは、
さっきのこの一文を――」
価値を渡して、
お金をもらい、
それを繰り返せる仕組み
これを、見落としがないように細かく分けているだけなんです。
そのために、
次の5つの問いで考えてみましょう。
① WHO|誰が「お金を払う人」なのか
Step3・4で整理した内容をもとに、
あらためて考えます。
- どんな人が(WHO)
- 最終的に「支払う側」になるのは誰か
ここで大切なのは、
👉 フォロワー数や反応の良さではなく
👉 実際にお金を払う人を具体的に思い浮かべることです。
② WHEN|いつ、お金を払う行動が起きるのか
次に考えるのは、
「支払いが発生する瞬間」です。
- どんな不安・課題・迷いがあるときか
- 自分で解決しようとして、限界を感じるのはどんな場面か
- 「誰かに頼ろう」「外注しよう」と思うのはいつか
👉 悩みが、行動(支払い)に変わる瞬間
を言葉にします。
ここが曖昧だと、
「良いサービスなのに売れない」状態になります。
③ WHY|なぜ、その価値を選ぶのか
次に、
「なぜ他ではなく、これを選ぶのか」を整理します。
- なぜ今すぐ解決したいのか
- なぜ自分でやらずに任せたいのか
- なぜこの人・この方法なのか
👉 支払いを正当化する理由を言語化します。
ここは、
Step4「なぜあなたが選ばれるのか」と
深くつながるポイントです。
④ WHAT|何に対してお金を払うのか
ここで、
提供する価値・サービスの中身を整理します。
- どんなサービス・商品なのか
- 何が解決されるのか
- どんな変化・成果が得られるのか
👉 「やっていること」ではなく
👉 得られる価値で表現できると理想的です。
⑤ HOW|どんな形で、どう申し込まれるのか
最後に、
お金の受け取り方と導線を整理します。
- 単発サービスか、継続サービスか
- 講座・商品としてまとめて提供するか
- どうやって知ってもらい(SNS・紹介・SEOなど)
- どんな流れで申込みにつながるか
これは、
④で決めた価値に、無理なくたどり着くための流れです。
⑥ この仕組みは、続けられそうか(現実チェック)
最後に、全体を見渡します。
- 自分の時間や体力で回せそうか
- 一度きりではなく、同じ流れを繰り返せそうか
👉 がんばり続けないと成り立たない形
になっていないかを確認します。
Step5のゴール
このステップのゴールは、
WHO・WHEN・WHY・WHAT・HOWを
自分の言葉で一通り説明できること
細かい数字は、次のStep6で扱います。
ここではまず、
「お金が生まれる流れ」が一本につながっていればOKです。
価値が、どんな流れでお金に変わるのかを
自分の言葉で説明できること
細かい数字は、次のStep6で扱います。
ここではまず、
「流れ」が頭の中で一本つながっていればOKです。
Step6|数字は「概要」を押さえる(詳細は後編へ)
この段階で、
数字を完璧に作る必要はありません。
ただし、
数字から完全に目をそらさないことが大切です。
前編では、
次の問いを“ざっくり”意識できていれば十分です。
- 何を、どれくらい売れそうか
- 月や年で、どれくらいの売上感か
- 売るために、どんなお金が出ていきそうか
- この事業、続けながら生活できそうか
これは、
「続けられそうか?」を判断するための数字です。
後編(「はじめての事業計画|数字と計画を“形”にする編」)へ続きます
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ここまでで全体像は完成です。後半はいよいよ数字にしていきます。わくわくしますね(笑)!

また後編でお会いしましょう!
後編では、こんなことを扱う予定です
- 数字はどこから作るのか(販売計画の考え方)
- 売上・費用・キャッシュの見方
- 3か年計画はどう描けばいい?
- フォーマットはどう使えばいい?
後編:
「はじめての事業計画|数字と計画を“形”にする編」
をお楽しみに!

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